【中編】彼女様は甘い味。
何故、あたしの唇に甘い味がしたのか。
考えてみるとそれは単純なことではありますが…この未経験、なあたしからしてみれば未知の領域に達する勢いのことであります。
…あたの頬や鼻に触れていた髪、…先輩の赤い髪。
先輩…??
いや待って下さい、奏音さん。
※自分で言うな。
この場所。屋上という場所には今この瞬間はあたしと蓮先輩しかいないわけですよね?
二人。
「……っ!?」
少し時間は掛かったが。
奏音的にはそんなには時間は掛からずに解った。
どんどん赤く赤く熟していく“奏音”という名の果実。
その赤さはその色の変化と共に、甘さも増していくのである。
恋を知らなかった一人の女の子。
『仕方ない』と一言で他人からの理解を諦めてしまっていた女の子。
少しずつ、“恋”というものを知っていった女の子。
恋の苦しさや嬉しさを知った女の子。
「言っとくけど俺、初めてだから…」
ちょっと視線を外して蓮先輩はあたしに言う。
は…初めて?!
蓮先輩がこのような不純的な行為。
初めてなんて…
※決して不純ではありません。