【中編】彼女様は甘い味。
…やっとこの日がきました!
嬉しくて嬉しくてたまないこの気持ちを押さえられず、
ピョンピョンと自然に跳ねながら歩いてしまう。
「結衣ちゃんっ、…ただいまです」
自分の部屋に戻る途中、
あたしの隣にある結衣ちゃんの部屋のドアに向かってそう言う。
「あー、奏音おいで」
中からそんな声が聞こえて、
待ってましたと言わんばかりに嬉しそうなニヤケ顔を抑えながら、
ドアのノズルを握る奏音。
「入りますね…」
─ガチャ
「…わぁぁ、その箱ですね!」
基本的にいつもあたしが居ないときには、
結衣ちゃんが預かってくれることが多いので…
思い切り走って結衣ちゃんの元へ向かう、…と!!
「うぎゃ…っ!」
─バタッ
…痛い、ですぅ…。
足に何かが引っ掛かったと思って足元を見ると…
「バチが当たったんだよ〜」
とても楽しそうに笑う恵ちゃん。
「ちょっと!
…危ないじゃないですか!!」
転んでぶつけた鼻を押さえながら、その犯人を睨み付ける。
「だって姫山先輩と一緒にいるからだし!
…二人ともズルい!!でもやっぱり結衣のが許せないっ」
一体、恵は何が言いたいのか…
奏音にはいまいち理解が出来ていないようで。
「…仕方ないじゃない、幼馴染なんだから…
それより奏音に謝って…、大人気ないわよ本当に」
椅子に座りながら、
読んでいた本にしおりを挟むとそう言った。
「…だって、ズルいんだもん!」
「謝りなさい」
「だってだってだ…っ
…奏音!?鼻血!」
恵ちゃんのその言葉に驚きつつ、
鼻を押さえていた手を見てみると、少量の血。
…まさかの、鼻血です!!