【中編】彼女様は甘い味。
「だからごめんって言ってるのに…っ!」
ベッドをポカポカ叩きながら不満そうな恵ちゃん。
「…悪いと思うなら苛めないで」
「分かったよぉ~、!」
絶対にこの『分かった』というのはこの時だけの言葉なんだろう、と。
結衣も奏音も頭の中ではそう思っていてそれと同じように恵自身も二人がそう思っていることを分かっているだろう。
「あっ!!
…それよりそれよりっ!」
急に目をキラキラと輝かせて、
何か、というよりも“お届き物”をねだるような目をする奏音。
「…これね、どーぞ」
ニッコリといつものように優しく笑うとあたしの白い箱を渡してくれる。
その箱を受け取ると、『ありがとう』と結衣ちゃんに言って部屋を出ていった。
奏音はさっき箱を抱きかかえながら隣にある自分の部屋に入る…
―バタン…
やっぱりニヤける顔を抑えることが出来ないらしく、そのまま奏音はベッドに飛び込んだ。
「にゃーっ!」
意味深な声を上げてその箱をベッドの上に置き、自分もベッドに正座をする形で座る。
この日をどれだけ楽しみにしていたか、
…なのにいざとなると…、こう。何故かなかなか開けるって作業が出来ないもので…ね?
ドキドキしながらその箱に手を伸ばす。
「…わぁ、綺麗なラッピングされてます…っ!」
その淡いピンクの箱を閉じている白い紐をゆっくりと解いて、箱をを少しずつ開ける。
わぁ…っ、!
そこにはあたしがずっと待っていたウーたんがいて…、一緒に入っていたビニールの袋にはウーたんの洋服が何着かあって…、
「んー、幸せですっ!」
そのままウーたん人形を抱えて奏音はベッドに寝っ転がった。