【中編】彼女様は甘い味。
天使の好きなモノ
「…あ!
今日はここでやるんですか?」
軽音部が多いこの学校では、
ライブや練習用に小さなライブハウスみたいな場所がある、…らしい。
今日はそこで練習をするから来てねっ、と。
葛木先輩に言われまして…
「そうだよっ!俺たちはよく来るからココ
…覚えとけよ〜?」
床を指差しながらアメを舐めて大塚先輩は言った。
…すると、
その指を差した方の手の平を急に奏音の目の前に差し出して、手を握り拳にしてもう片方の手の平で覆う…
そしてその手をサッと離して、その握っていた手も開く。
「…プレゼント、ね?」
大塚先輩の手の平には3つのアメが乗っていて…
「す、…すごいです!
…大塚先輩は、魔法使えちゃうんですね!!」
あまりにも本気で奏音が言うもので…、困った愁は笑いながら、
『また見せてあげるね』
小声でそう言うとその手の平のアメをあたしの手に握らせて、ステージの方に行ってしまった。
…凄いです!
まさか、魔法使いがこんな身近にいるだなんて…。
「…あれは、マジック」
「マ、ジック…?」
「…そう、
徹くんの言う通り」
隣から急に声がして聞き返せば山瀬先輩、その隣に結衣ちゃん。
…マジック、
だったんですか…
ガックリと肩を下ろして悲しそうな奏音。
普通の人なら最初から分かるだろうけど、奏音の頭の中はどうなってるんだろう、
…徹は秘かにこの時そう思っていた。