【中編】彼女様は甘い味。
「ウ…、ウサギ女って、ひどいですよぉ」
まさにウサギそのもののようなシュンとした表情でそう言うと、蓮二の表情がおかしくなっていく。
「…べっ!べっ!」
『べ』?
「先輩…、「べっつに!お前のことなんて…」」
あ、今『べっつに』って言いました。
「分かってます、…ありがとうございましたっ」
いつものことなのでこれは相手にしなくていいんだという判断になったのか、そのまま奏音はステージからピョンっと、飛び降りた。
…訂正、ピョンではなく、
ヨイショって感じに降りたのが正しい。
「…ちょっ、ちょっと待てよ!」
「へ…?」
またもや急に呼ばれて後ろを振り返る。
「…男には気を付けろ、それだけ」
ちょっと赤くなった顔で、姫山先輩はそんなことを言う。
あ、!
…もしかしてこれって。
バットくんのお返しですね!
やっぱり姫山先輩も常識のある方なんです、はい!!
「いえいえ、気にしないで下さいっ!」
満面の笑みでそう答えると、そのまま『結衣ちゃ〜ん』なんて言って走って行ってしまった奏音。
「……はぁ…?」
口をポッカリ開けて、また蓮二は思うのです。
…変な女。
「…蓮にしては珍し〜」
お尻を押さえながらそんな声も一つ。