【中編】彼女様は甘い味。
ふと空を見上げて思うことが一つ。
…ここからじゃ、
空までの距離が遠いですねぇ…
あの日、あの日に…、姫山先輩と見た空はとても近かったのに。
…でも、ここは甘い花の匂いがするから、
「ここもまたいい場所だよね…?」
ウーたん人形にそう聞くとコクンと頷かせて、ちょっと緩む奏音の表情。
自分の目線に合わせるようにして、また何かを言おうとした時…
―バシッ!
「…うぎゃっ?!」
…突然、後頭部を何かで叩かれたと思うと、自分の手の中にあったはずのウーたんがいないことに気付く。
ウーたんっ!?!?
「お前、…絶対病気だろ…?」
その声に一瞬、
ビクビクっと身震いして振り返る、
「ひ、ひ、姫山先輩っ!!」
「…『ひ』が多すぎんだよ、ばーか」
姫山先輩はそう言うと、あたしの座っているベンチの空いている隣に深く腰を下ろした。
そしてその手には…、
「ウーたんっ!!」
目をこれでもかってくらいに見開いて驚く奏音、
それを見て面白そうに笑う蓮二はウーたんの耳だけを掴んで、ぶらぶらと揺らすように目の前でチラつかせる。
…や、やめてえぇぇぇっ!
「あぁぁぁぁぁぁっ!!!!」