【中編】彼女様は甘い味。
この世の終わりのような大きな声を上げるのに対し、嫌そうにウーたんを持っていない方の手で耳を塞ぐ蓮二。
「返してっ!…返してっ!!」
「…わーったよ、だから黙れっって…」
先輩はそう言うと、あたしの膝にウーたんをポイッと投げた。
…と言っても優しく。
「…はぁ、良かったですぅ…」
そんな奏音を見て、蓮二は思う。
やっぱり、ちょっとおかしいのかもしれない…、なんて。
一瞬だけ嫌そうにウーたんへ視線を送って、
「…お前ってさぁ、そんなに好きなの?ソレ」
ソレ…、?
「最近よく持ってんじゃん、その人形。」
「…あ、ウーたんですかぁ!
だってウーたんは大切なお友達なんです」
…あぁ、友達ねぇ…
こんなことを言われて納得してしまう自分は、もうコイツを見慣れたからか…?なんて蓮二は思う。
「…変な女だな、お前は」
クスクスと笑う声が聞こえて、
「変って…、あたしは本気で…っ」
ウーたんを見ていた視線を先輩に移す、そして…止まる動き。
…アレ、?
どうしたんでしょう…、
いつも見慣れている先輩の笑顔が…、何だか。