【中編】彼女様は甘い味。
『あ、…そこの君、
ほっぺに何かついてる…、インクかな?』
さっき喋っていた人がまたマイクを通してあたし達のそばにいる女の子に話し掛ける。
…よくインクなんて見えるもんだっ。
案の定その彼女は頬を赤らめて、『あ、…どうしようっ』…だなんて。
「…恵ちゃん、あの先輩って誰?」
気になって聞いてみる。
「えっ?…奏音は葛木先輩の事も知らないの??
葛木京也先輩、王子様って感じの人だよね~、まぁ、女関係の噂が凄いけど…、」
…へぇ~っ、
でも、そういうフシダラな男の人は苦手です…
「…じゃぁ、そんな奏音の為にDevilのメンバー紹介してあげるっ!
さっきの葛木先輩がベース担当なの」
そういうと再び奏音は視線を葛木先輩に向ける。
「そうなんですかぁ…」
あんまり興味がないのか、奏音はボーっとそう言った。
「それで…、あのギターを持ってるのが…、あたしの大好きな山瀬先輩!!」
「…山瀬徹、基本的に無口で喋らない、謎ばっかりの男」
キャーキャー言ってる恵の代わりに結衣がそう説明する。
「えっ!?
結衣ちゃんって…、知ってたんですかぁ?」
…すると、頬を赤らめる結衣ちゃん。
もしかしてそれって…??
「…まさか結衣、山瀬先輩のこと…」
「仕方ないじゃない、幼馴染なんだからっ」
サラッとそう言う結衣ちゃんに、あたし達の目も点。
「えーっ!!うっそやん!」
恵はそう言うとまたギャーギャー奇声を発する。