【中編】彼女様は甘い味。
「…姫山先輩と、楽しそうに話してたわね?」
先輩達がステージでなにやら準備をしている時、隣にいる結衣ちゃんが言った。
…え、?
もしかして…
「側に、居たんですか…?」
…そう聞けば縦に頷く結衣。
「だ、だったら声を掛けてくれたら良かったのに…」
しょぼーんとした声と表情の奏音を見て、
クスクスと笑うと『あまりにも2人が楽しそうだったから』なんて言ってみせた。
…っ、そんなこと、
「べ、別に、そんな…」
「それにしても、…本当に綺麗で整った顔してるわよね…
…羨ましい」
ステージの上にいる姫山先輩…、じゃなくて…
蓮先輩を見て結衣ちゃんが言った。
…でも、確かに。
最近になって先輩が人気なことに、やっと気が付いたんです。
…すると、
急に音楽が聴こえてきて、
あ、練習が始まるんですね…
隣の結衣ちゃんはやっぱり山瀬先輩を見ていて、
それだけであたしの顔は緩んでしまって困ります、まったく…
そしてあたしもステージに目を向けた、
前奏も終わって蓮、先輩の声が響いてきた瞬間…
ゆっくりと目を閉じてみる。