【中編】彼女様は甘い味。
昔から、…そうやって逃げてきたんです。
変わり者の自分を軽蔑したりする方達から逃げて、そのままで…
相手に近付くこともせず、理解を求めることもなく。
…あたしと居ることが相手にとって不快なことなんだとしたら、それでいいんだって。
けど、
けど…、先輩には離れて欲しくないんです。
どうしても、やっぱり。
「…あ、ありがとう…ございますっ」
薄らと浮かぶ涙を拭って、奏音はドアの前に立った。
「あーあ、俺は甘いもんでも食いに行こうかなぁ〜
…京也さぁ。付き合ってー」
「…えっ!?!?…ちょっと、」
大塚先輩が半ば強制的に無理矢理、葛木先輩の腕の絡みつくようにすると、それに続いて山瀬先輩も結衣ちゃん達も次々と席を立っていった。
「どーせ、覗き見でもしようとかおもってたんだろ…」
呆れたように言う徹に不満顔の京也。…けど図星だったようで。
「…頑張れっ!」
グーサインをしてあたしに優しく微笑みかける恵ちゃん、
フフッと結衣ちゃんは優しい笑みを浮かべて部屋を後にする。
…そして一人ポツンと取り残された奏音。
フゥッと、深く深呼吸。
そしてゆっくりと奏音の細く白い腕がドアへと伸びた。