【中編】彼女様は甘い味。
何故か反動的に瞑ってしまった目を、少しずつ開いてみる…
…先輩、?
その先輩の姿は不思議なもので、椅子に座ったまま机に足を乗せて顔は下を向いたまま。腕は前で組んであって。
もしかして…、
「…寝てる、のですか…?」
そっと声を掛けても返答は無いので、…寝られているんですね、
緊張の糸が一気に解れたようにフゥッと再び深呼吸。
全開に開かれたカーテンは風に優しく揺れ、窓から零れる柔らかな日差しが蓮二に当たって、
…今日は髪をセットしていなかったのか、?
その赤い髪はそっと流れ込む風にほんの少し、揺れていた。
この、赤い髪はなかなか似合うもんじゃない。…この時の奏音はそんなことを考えていて。
改めてみる先輩の整った顔に一人、赤面している自分の顔を隠す。
…誰も見てなんかいないのに。
「あれ…、これ、なんでしょうか…?」
ポツリとそう言った奏音の線の先にあるもの。
どうしてこんなたくさんの紙が散らばっているんでしょうか、?
その中の一つを手にとってみれば、そこには綺麗な字で書かれているたくさんの文字。もしかしてコレが歌の歌詞、なんでしょうか…?
ちょっとのドキドキ感を抑えきれず、
“例えば悪魔と天使が
恋に堕ちたとして…”
歌の始まりの部分を見て、思わず固まってしまったあたし。
…悪魔、と…天使、ですか?