【中編】彼女様は甘い味。
「これって…、誰のことを言っているんでしょう…」
“近付いたと思えば離れて…天使なんかじゃない君は天使の殻を被った堕天使”
いくら鈍感な奏音も、これは誰かを想って書いているんだと分かって…
天使…、堕天使。
先輩は…
誰を想っているんですか?
…何ですか?
心が、心が軋む音がします。
誰に想いを…、誰を…
「…ん、………あ゛ぁ!!!」
っ!?
「起きられたんですか…?せんぱ…っ!!」
『先輩』という前にあたしの視界は突然真っ暗になって、…あれれ?
「…テ、テメェ…!!!
まさか見てねぇだろーなぁ!?!?」
見てない…?見てな…
…見ました。
でも、今そんなことを言ったら、こ…、殺されてしまいますっ!
「み、見てないです!!」
そう言うと、ハァっと大きなため息が聴こえてきて…
「…お前さぁ、声ぐらい掛けろ」
「あ、…はい…」
あたしの頭に被さったモノに触れてみる。
…あ、手にとってみればそれは先輩の制服の上着で、…そんな見られたくなかったんですね。なんて思う。