【中編】彼女様は甘い味。
目の前の視界には床、そしてとてつもなく痛む鼻。
「…うっ、…」
この鼻をぶつけるというのは、よく体験することなのですがなかなか慣れません。…いや、…慣れるわけがありません。
少しずつ上がる顔。
「…お前、」
そうすれば目をまん丸にしてあたしを見る、先輩。
何をそんな驚かれているのですか…?
「血、鼻血垂らしてんぞお前、」
―…一時の沈黙。
っっ!!
「へ…っ、あっ!?」
な、なんてことをまたあたしは…っ!
何だか鼻の痛みとこの言いようのない恥ずかしさで視界がぼやけてきますよ…、
あたしは、何でいつもこう…、垂らしてばかりなのでしょうか。
そのままカーディガンの袖でゴシゴシと拭きまくる奏音、
「…それ逆効果、血が広がってんじゃねぇかよ」
あ、また呆れた顔をされました…
何だか先輩は、本当にあたしと居ると“苛々”してしまうんですね。
…今日は本当は謝りに来たのに、こうやって今はこんな迷惑を掛けてしまって、最終的に鼻血まで。
自分が情けなくて泣けてきます。
※もう泣いています。
「んな、…泣くなよ、
…そんなに痛かったのか?」
俯くあたしの顔を覗きこんで優しく先輩はそう聞いてくれます、けど、こんな恥ずかしい姿を見られたくありません…
反動的に顔を逸らす奏音。