【中編】彼女様は甘い味。




すると急にグイッと頬を手で挟まれる、そしてガッチリと固定されたあたしの顔。

…目の前には先輩。


あ、あたし、鼻血がぁぁ…

それだけでカァーッと熱くなる頬。




「…何でそんな泣いてんの?」

そんな、そんな困った表情で見ないで下さい。…余計、哀しくなってしまいます…


「は、…鼻血が…、その…」

どんなに近くに先輩の顔があったとしても目を見ることなんて出来やしなくて、先輩の後ろの時計を出来るだけ見るようにしてみたんです。



…恥ずかしくって、

もう穴があったら入りたい状態で。




「いいよ別に、」


…えっ?



すると急にあたしの身体は引き寄せられて、フワッと何かに包まれたように。

仄かな甘い香水の匂いがして、酔ってしまいそうになる。




「…せん、ぱい…?」


先輩の肩に顔を埋めたまま、突然のことに少し驚きながら口にした言葉。




きっとあたしの心臓は今…

張り裂けてしまう程にドキドキと高鳴っていて、このまま溶けてしまうんじゃないかってくらいに身体が熱を帯びている、



「俺は、…なんつーか思ってるのと反対のこととかよく言っちまうんだよ…

…それに、口も悪けりゃ人を傷つける言葉もよく言う」


先輩の、声が…

何だかいつもより小さくて、真剣に話してくれてるのが分かって。



「…だから、その…」


急に詰まる言葉。…先輩?



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