【中編】彼女様は甘い味。
こんな年になってまでもその占いを本気で真に受けてしまうから、奏音の頭の中は少し怖い。
…と二人は思っている。
「えっと…、
“ピンクのものを身に付けるとハッピー”だそうです!」
グッと片方の手で握り拳を作るとガッツポーズをしてみせた。
…ピンクのもの、ピンクのもの。
あ、…今日のあたし身に付けてますっ!
「結衣ちゃん!恵ちゃん!
…ホラ、これですこれです見てくださいっ!!」
若干、興奮気味で右手を見せびらかすようにブレスレットと指輪をチラつかせ、
もう片方の左手で髪を縛っているレース付きのピンクのシュシュを指差した。
その姿は少しばかり笑えるらしく、クスクスと結衣は笑っている。
「…良かったわね、奏音」
「ハッピーハッピー!」
優しく言う結衣の後に馬鹿にしたような言い方をする恵。
それに腹を立てたのか頬をプクッと膨らませる。
「ひどいです…っ!」
「可愛いね、奏音は本当に」
ば…、馬鹿にされてます。
本当に本気で、
…っ!!
いくらなんでもそこまで…、
本人からしたら衝撃的なことだったのか何なのか、
「ちょっと恵、…あんまり奏音を苛めないで?
…あ、電話だわ、」
結衣ちゃんはあたしを庇ってくれて、やっぱりとても優しい人です。
恵ちゃんとは…、ぜーんっぜん違います!!
「誰からぁー?」
奏音がそんなことを一人考えている間に、
結衣に電話を掛けてきた相手が気になるらしく、そう聞く恵。
すると少し躊躇いながら、
「…徹くんよ?」
そう言って通話ボタンを押した。