【中編】彼女様は甘い味。




─しばし沈黙。



すると膨れっ面の奏音が急に口を開いた、


「結衣ちゃん…、あたしに秘密にしてました!

…教えてくれませんでした!!」



あ…、そういうことかっ!

とでも言いたいような顔をすると、



「奏音、あたし…ちゃんと話したはずよ?」


結衣ちゃんはそう言うと、二段式のお弁当箱の蓋を閉じて重ねた。


…ちゃんと話した?

へ、??



「…っで、でも!」


「聞いてなかったのよ、

…奏音ボーッとしてて何言っても頭に入ってないみたいな感じで」



頭に…、入ってないみたいな感じ!?!?




「…あ、そういえば結衣こないだ言ってたねー

奏音が上の空で心配だ〜、とか何とか」


左手の上に右手の握りこぶしがパチンと当たって音が鳴る。



隣では『なるほど、なるほど』と言いまくる恵ちゃん。




…そう言われてみますと、


何か結衣ちゃんに言われたような、言われてないような。


けど…、



今回はあたしが、…悪かったみたいです。


「ごめんなさい…、結衣ちゃん…っ」


眉を八の字にしてバツの悪そうな顔をする奏音を見ていつも通りの優しい笑顔を向ける結衣。



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