【中編】彼女様は甘い味。
「だって、結衣が付きあったでしょ?…で、奏音も姫山先輩と絶対くっつくでしょ?
…え、ちょっと待ってよ!?…そしたらあたし一人なんだけど!!」
急に何をするのかと思えば、立ち上がってハッとした顔のまま口に手を当てる恵ちゃん。
そんなに重要なことなのでしょうか…?
でもそれより…、
「あ!…あたしが何で姫山先輩とくっつくんですかぁ?!」
同じよにつられて立ち上がったあたしは、自分より背の高い恵ちゃんを見上げるようにしてそう言う。
…なっ!!
何でそういうことになってしまうんでしょうかね、…まったくです!
とか言いつつ内心ドキドキの奏音。
「でも、もしかしたら本当にそうなるかもしれないわよね?」
なんて、…サラリそんなことを言う結衣ちゃん、
ちょっと、二人して何を…っ、
「…だって奏音、明らか好きじゃん姫山先輩のこと」
背の低いあたしに視線を合わせるようにして恵ちゃんは腰を低くすると、グッと顔を近付けて真顔で言った。
そう、本当に本当の真顔の真顔です。
「す、…す、好きだなんて…、そんなことっ!!」
そんなんじゃないです…
別に、好きなんてそんな、そんなわけじゃ。
…いやでも、あ、だけど…
「「分かってる」わ」
結衣ちゃんの『分かってるわ』の『わ』だけが後に残るように二人の声はダブってそう聞こえた。
…分かってるって…?
あたしの心の中が見えてるんですか…っ!?!?
※違います。