コバルトブルーの誘惑
シャワーを浴びて、Tシャツと部屋着のテロンとした長いパンツを履く。

まあ、嶺緒に欲情されても困るので、肌は見せないようにしておく。

部屋はエアコンが効いていて快適だし…

リビングに出ると、

同じようにシャワーを浴びた嶺緒が上半身裸で、スウェットパンツを履いてビールを飲んでいた。

「服を着てください。」と嶺緒の横を通り過ぎ、
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して飲む。

ダイニングテーブルの上にはスナック菓子とチョコレート。
昔のホストの家で週末の午後にくつろぐ時の定番だ。

「懐かしいね。」と私が輸入菓子の袋に触れると、

「5年前に戻りたい。」

「もう、26歳になってる。お肌も曲がり角だし…」

「どういうこと?」

「25歳を過ぎると、もう若くないって女の子はそう言うのよ。」

「21歳の舞も26歳の舞も綺麗だよ。」

「そういうのを『お世辞』って教えなかった?」

「別にお世辞じゃない。思った事を言っただけ。
ビールとスナックで夜更かししない?」とTシャツをかぶりながら、私の顔を覗く。

「ビールはもう、いらないかな。酔っ払うと、明日起きられないし…
紅茶飲む?
嶺緒が好きだって言った紅茶持ってきたの。…日本でも手に入る所があるのよ。
『アリシア』のシトラス。代理店が銀座にある。」と言うと、驚いた顔をする。


「覚えていてくれたんだ。まだ、1番好きな紅茶だよ。
外ではダージリンが多いけど家ではオレンジの皮がブレンドされたシトラスを飲むんだ。」

「覚えてますよ。アフタヌーン・ティーの習慣のある国に住んでいる嶺緒の好きな紅茶。
どんな紅茶か気になるでしょう?」と言いながら、部屋に戻って、小さなグリーンの缶を持って来ると、
嶺緒は大げさに驚いて、

「淹れてくれる?」と私の瞳を覗き込んだ。

だから…
ドキドキするからやめてください。
せっかくお色気はナシでここにいるんですから…




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