コバルトブルーの誘惑
5年前、嶺緒に教わった通りに紅茶を淹れる。

カップを温め、沸騰仕立てのお湯をポットに注いで、ふきんをかけ、きっかり3分蒸らして…

「どうぞ。」とカップを出すと、

「落ち着く香りだ。淹れ方も上手だ。」と嬉しそうに紅茶を飲む。

「カフェインで眠れなくなる?」

「好都合だ。眠らずにおしゃべりしよう。チェックアウトは昼で良いんだ。」とソファーセットに移動し、

大きなテレビの目の前に3人がけのソファーを移動させ、並んで座り、

古いハリウッド映画を低い音でかけて、
笑ったり、画面に夢中になったり、控えめにじゃれあったりしながら、
一緒にソファーで過ごした。



5年前のように…

前は週末の午後だったけれど、

オトナになったので、真夜中のくつろぎの時間。を満喫した。



私達は朝方、ソファーで一緒に眠ってしまい、

ふと、気づくと、ソファーで抱きしめられたまま嶺緒の上で眠っていた。

大きな嶺緒はものすごく窮屈だっただろうか

私は体に回された腕をそうっと外し、ゆっくり起き上がる。



嶺緒は『しばらく』日本にいると言ってた。

それっていつまで?

こんなふうに過ごしていたら、また、嶺緒が好きになったしまう。

そして、また、別れる時がやってくるのだろうか…

前は失恋の痛みがわからなかったから、耐えることができた

でも、もう嫌なの。

別れていくのがわかっている人と、恋人になるつもりはないよ。

「嶺緒の馬鹿」

目を覚まさない嶺緒の瞼にそう呟いてみた。
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