コバルトブルーの誘惑
慌てて、後輩2人に私の担当社員さんを引き継ぎ、

途中の仕事は課長に押し付け、
(だって、しょうがないでしょ。明日には他で働くんだから)
午後18時、私は東京駅の近く。丸の内の大きなビルの前にいた。
『アンダーソン』本社。明日からの勤め先を見上げる。

30階。エレベーターを降りると、受付の綺麗な女の子が2人。

「ウィリアム・嶺緒・アンダーソンさんに面会したいんですが…」と言うと、
受付の女の子が胡散臭げな顔をして、

「副社長に…お約束でしょうか?」と私の顔を見た。

副社長?嶺緒が?!
『アンダーソン』の一族ってこと?!

「岸谷 舞が会いたいと言っていると言ってくだされば…会っていただけると思いますが…」と怒りを堪えて微笑むと、

「少々、お待ちください。」と電話をかけている。

私はイライラと、勧められたソファーには座らずに、窓の外を眺めていると、

オフィスの受付に、急ぎ足で、ケンさんがやって来た。

「素早いね。明日来るかと思ったけど…」とクスクス笑っている。

「嶺緒に会わせてもらえないんですか?」

「うーん。会議中なんだよ。部屋で待つ?」

「どこででも、待ちます!」

「じゃあさ、サラをつけるから、嶺緒の自宅で待ってよ。」

…自宅?私が顔をしかめると、

「週末には落とせなかった。って嶺緒がいってたからなあ。やっぱり警戒する?」

「…警戒はしていますが…行きます。キチンと話さないと…納得できません。」

「良い条件を付けたつもりだけど…」

「私に秘書は出来ません。」

「誰も、最初はベテランって訳じゃないよ。僕とサラで指導するし…」
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