コバルトブルーの誘惑
「いちど、帰って出勤します。」

「なんで?」

「…服を着替えないと…秘書課に勤めるならスーツが必要だと思うし…」

「ああ、仕事用の服は僕が用意するよ。
無理に来てもらったんだし…ケンに用意してくれるよう頼んである。
じきに持って来る。ここで待てばいい。」
と言って、私を深く抱きしめ、
「おはようのキス」と顔を近づけてくるので、嶺緒の顔を手のひらで押さえて、

「スーツくらい持ってます!!」と腕を振り払って立ち上がる。

「待ってよ。朝御飯一緒に食べよう。ここのパンケーキ美味いよ。昔好きだったでしょう」

パンケーキ…

「フワフワで、グアバソースとメイプルシロップがついてる。朝しか食べられない限定メニュー。
下のカフェテリアで一緒に食べよう」と大きな笑顔を見せる。

「…ズルいな。」私がパンケーキが大好きなのを知っている。とため息を吐くと

「大人になるとそういうことも出来る。シャワー浴びてくる。待ってて。」

と立ち止まった私を引き寄せ
頬に音を立ててキスをしシャワールームに消えて行った。


…オトナねえ

と私は前に会った時より強引になっている嶺緒の笑顔を思った。






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