コバルトブルーの誘惑
帰りにサラさんはケンさんに電話して、
食事していない嶺緒とケンさんの為に、サンドイッチをテイクアウトしていた。

食事は後回になるくらい忙しいんだね。



午後3時。
「ちょっと嶺緒を休ませたい。舞ちゃん、紅茶淹れて」とケンさんに言われ給湯室に立つ。

役員用の給湯室はシステムキッチンが入っていて豪華だ。

用意されている『アリシア』のシトラスを丁寧に淹れ、
温めたブルーローズのティーカップに注いで、
帰りに寄った輸入菓子店のクッキーの小袋を添える。
イギリスの代表的なお菓子。
まあ、食べないなら持って帰ればいい。

「失礼します。」とノックをして入ると、ソファーセットに座って
嶺緒とケンさんが興奮気味に英語でディスカッションしながら、
サンドイッチに噛み付いている。

ちっとも何を言っているのかわからないけど、
興奮しているのは確かなようだ。


「舞!」と嶺緒は気付いて立ち上がり、私を迎えに来る。
嶺緒は私の持っていたトレイを持ってくれる。

「嶺緒、忙しそうね。後でカップを片付けに来るわ。」と言うと、

「舞、一緒に少し座ってよ。」と私の顔を見る。

「舞ちゃん、嶺緒が紅茶を飲む間、一緒にいてくれない。」とケンさんが笑顔を見せ、
サンドイッチを持つ。

「え、でもケンさんもゆっくり食事しないと…」

「俺はサラのそばで食べるよ。ここにいると、仕事から離れられない。消化に悪そうだ。
30分で戻るよ。舞ちゃん、紅茶、飲んでおいて。」とくすんと笑ってドアを出て行った。





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