コバルトブルーの誘惑
天ぷらを分け合って、ざるそばを一緒に啜り、
「日本の天ぷらってすごく美味しいよね。フリッターとは全然違う。」と嶺緒は楽しそうに食事をする。

「嶺緒の仕事はどう?」と見つめると、大袈裟に肩をすくめ、

「僕は半分日本人だけど、イギリスでそだってるからね。意見をはっきり言いすぎるらしい。
『やんわり』とか、『相手の気持ちを汲み取る』とか難しい。
ケンがフォローしてくれるから、やっていけてる」と憮然とした顔をする。

確かに嶺緒の表情はわかりやすいかな…

「うーん。『食わず嫌い』って知ってる?
日本人は単一民族に近いから、自分達と違うものに排他的な部分もあるんだと思う。
知ってみれば案外気があうかもしれない。って思うこともあるから、臆せずに何度も話し合うと良いかもね。
私は派遣会社で新しい相手と話すときは相手の話を8割。自分の話を2割。って思うようにしてるの。」

「そうか…フィフティーフィフティーって思わないほうが良いのかな」と嶺緒は少し箸を止めて考える。

「後はスマイル。嶺緒の笑顔は大切な武器よ。」と笑って見せると、嶺緒も私に微笑んだ。


食後に蕎麦湯を飲みながら、

「やっぱり、僕は舞が好きだな。」と大きく笑いかけてくる。

「…ありがとう」

「今日は泊まりに来てくれないの?」

「嶺緒はまだ仕事があるでしょう。」と笑って見つめると、

「今度のデートの時は仕事を全部終わらせておく。」とため息をつく。

私がくすんと笑うと、

「舞、いつまでも、はぐらかさないで。きちんと僕と恋人になることを考えて」と真面目な顔をする。

「そうね。…考えます。」と息を吐くと、嶺緒はブルーの瞳で私を見つめながら私の頬をゆっくり撫でた。


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