二人だけの秘密

『殺人鬼！』

突然、夢で言われた、美希さんの言葉が僕の頭によぎった。

「はっ！」

僕は殴る構えのまま、数秒間固まった。その数秒間、僕の記憶の中に美希さんの姿が浮かび上がる。

「す、すみませんでした。偉そうなこと言って………」

僕は殴る構えから一転、謝罪の姿勢に変えた。

夢で言われた美希さんの言葉をギリギリのところで思い出し、僕はなんとか佐藤先生を殴らずに済んだ。

「栗原さんの心配する気持ちも分かりますが、少し冷静になってください。彼女のことは、私たち職員の仕事です。君はもう、教室に戻りなさい」

「はい、失礼しました」

そう言われて、僕は職員室を出た。