二人だけの秘密
空が朱に染まる。

夏と違って日が沈むのが早くなったせいか、秋の夕暮れが寂しく感じる。気温も下がり、少し冷たい風が吹き抜けた。

「明日からお休みですが、美希さんはまた仕事ですか?」

久しぶり過ぎて敬語で話す、僕。

本当はなんで休んでいたのか理由を聞きたかったが、もちろんそんなことは聞けるわけがなかった。

「ははは、なんですか?その変な喋り方」

久しぶりに耳にした、美希さんの馴れ馴れしい口調。

「………」

全てが久しぶり過ぎて、目頭が熱くなる。

「今週は、仕事を休みます」

「そうですか?」

それを聞いた瞬間、僕の気持ちが沈んだ。

ーーーーーーまた、美希さんと会えなくなる。

と、思っていたら、「未来さん、今週の金曜日私とデートしませんか?」

「えっ!」

まっすぐな瞳で僕の顔を見つめる、美希さん。思いもよらない美希さんの言葉に、僕の頭が真っ白になる。
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