二人だけの秘密
「どれも全部、同じように見えるんだが………」

手にしたデート本に書いてある内容は、ほとんど一緒のことが書かれていた。

女性を褒めろとか。デートは、女性の気持ちが最優先とか。告白は、夜にしろとか。色々書かれていて胡散臭かったが、これが初デートの僕はこの書いてあることを信じた。

「………」

本に書いてあったことを暗記し、僕は店内から出ようとする。

「佐伯君。この本、そこに入れて」

その直後、美希さんと同じ苗字の人が、女性店員に呼ばれた。

「はい」

女性店員に呼ばれた佐伯さんが、低い声で返事をした。

「………」

僕は、声のした方に視線を向けた。

僕の視線の先に、男性の姿が目に映った。

「美希さんのお兄さんだろうか………？」

僕はそう思って、美希さんと同じ苗字の佐伯さんに近づいた。
< 137 / 206 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop