二人だけの秘密
「あの、すいません」

「はい」

僕の固い声を聞いて、佐伯さんがこっちを振り向いた。左胸に佐伯と書かれた名札がしており、年齢は22歳ぐらいに見えた。

「なんでしょう?」

優しい口調で訊く、佐伯さん。

「あ、あの〜。高校生の妹いませんか?僕の高校生でも、同じ苗字の女性がいるんですが………」

「もしかして美希と同じクラスメイトの、栗原君かな?」

「は、はい」

彼が僕の知ってたことに驚き、目を丸くした。

「美希が学校を休んでいる間、ずっと君のことを話していたんだ」

「そうなんですか………」

美希さんが家で僕のことを話していることに、不安と緊張が走った。

「ちょっと待ってて。これ終わったら、君にお礼を言いたいから。外で、待っててくれる」

「はい、分かりました」

そう言われて僕は、店内の外で美希さんの兄を待つことにした。
< 138 / 206 >

この作品をシェア

pagetop