二人だけの秘密
「ふぅ」

僕は、安心した。それと同時に、ネットを使って陰湿な攻撃をしている人間に腹が立った。

「いいことなんか、一つも書いてないじゃないか」

全てのスレッドは、悪口しか書かれていなかった。嘘か本当か分からないけど、坂口かなさんに彼氏がいることも掲示板サイトに書かれていた。

「………」

僕の頭の中に、少し前にバスの中で喋っていた若いカップルの女性の言葉がよみがえる。

『でも、あの風俗で働いていた女子大生、かわいそうだよね』

ーーーーーー確かにそうだ。

僕はiPadを閉じ、クーラーを消した。そしてリビングに駆け下り、タンスから夏服を取り出してそれに着替えた。

白いTシャツとネズミ色のハーフパンツに着替え、メンズの肩掛けカバンと財布を持って家を出た。
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