私はそんな先輩が。
「ちょっとこっちに来てくれるかな?」
「はい」
大里先輩が教室から私達の姿が見えない位置に移動した。
それに私もついて行った。
「夢愛ちゃん、ごめんね。
帆波がきたってきいた。
大丈夫だった?」
「はい、大丈夫です。」
そう。そうだった。
先輩は優しい人だった。
人のために行動できるそんな優しい人だ。
「ごめんね。」
そう言って帰ろうと階段の方へ向かっていった。
それをぼーっと見ていた。
さっき告白するって決めたばっかりじゃん!
行動しろ!自分!
帰っていく先輩を追いかけ後ろから抱きついた。
「先輩。
私先輩が好きです。
高総体のときに好きになったんです。」
先輩へ語るように話した。
「ありがとう。
でも、夢愛ちゃんの気持ちには…答えられない…。
俺には帆波がいるから…。」
…っ。
やっぱりキツいな…。
吹っ切れるためって思ったけど、全然吹っ切れる気がしない…。
「先輩はズルいです…
そんな、ありがと、なんてっ…言われたら期待しちゃうっ…じゃないっですか…!
彼女がいるならっ…実習で作ったやつも受け取らないでくださいよ…」
言いながら涙が出てきた。
今思うと後ろ向きでよかったな…
顔が見られずに済むから…。
そう思っていると、大里先輩が動いて向き合う形になった。
「ごめんね。ありがとう。
こんな俺を好きになってくれて。
ありがとう。」
私が泣いているのを知って涙をぬぐってくれないのが先輩なりの優しさなんだろう。
「こちらこそありがとうございました!
帆波さんと幸せになってください!」
ガバッと頭を下げるとハハッと笑う声が聞こえた。
ありがと、と言った気がした。
足音が遠くなるのがわかった。
私は先輩の幸せを願いします。
でも、諦めることはしませんからね?
貴方はやっぱりずるい人です。
最後の最後まで私を好きにさせる。
私はそんな先輩が大好きです…。
✽END✽