はじめて知った世界の色は
森川さんの言葉でずっと傍観者だった人たちもエリに賛同してた人も「なんかヤバいんじゃない?」とざわめいている。
一瞬沈黙になって校内に予鈴のチャイムが鳴ると、エリは私から距離をとった。
「ああ、面倒くさ。もういいや。飽きてたところだったし。地味は地味同士で仲良くしてれば」
そう吐き捨てて乱暴に自分の席へと戻っていく。
まだ現実との境界線があやふやだけど、この気持ちは……。溢れてくるこの気持ちは……。
「終わったんだよ、翠ちゃん」
緑斗の声で私はハッとした。
……終わった?
終わらないと思っていたあの地獄のような日々が終わったの?
「翠ちゃんはいじめから勝ったんだよ。自分で強くなって抜け出したんだ。これからだね。今日からたくさん楽しい学校生活の思い出が作れるね」
緑斗のその言葉に私は涙を止めることができなくて、顔を手で覆っていると隣から一枚のハンカチが。
「使って」
それは優しい顔をした森川さん。
「約束どおり茅野さんへのノート持ってきたから受け取ってね」
「……っ。ありがとう。森川さん……っ」
2学期の初日は涙でグシャグシャになってしまったけど、色々な人たちのおかげで私は乗り越えることができた。
本当にこれからどんな恩返しをしていこうか。
でもその前に……。
「私のことは翠でいいから、森川さんのことも〝由実〟って呼んでいいかな?」
新しくできた友達を私は大切にしたいと思った。