はじめて知った世界の色は
自分でも薄々気づいているけど、最近の私は緑斗に対していちいちドキドキしすぎだと思う。
ちょっと前まではなかった感情が芽生えはじめていて、いつからと聞かれたら分からないけど、あの夏祭りの時から私はすでにおかしかった気がする。
夏の暑さのせいにしてたけど、もう9月も半ばで暑さはないしむしろ快適な秋日和。
となると、この感情は一体なんなのか。
「翠ちゃん学校楽しい?」
「え、う、うん。た、楽しいよ」
「それは良かった」
そしてその瞳の奥に見え隠れしてる寂しげな視線はなんなのか。
私自身のことが解決して、心に余裕ができて、充実感が生まれて。そしたら急に緑斗に対しての興味がこんなにも溢れてくる。
緑斗のことが、もっと知りたい。
それなのに越えてはいけない一線のように私たちは混ざり合うことも重なり合うこともなく、理科室に映る影は私だけ。
そんな時に限って緑斗の右耳のピアスが美しく光るから、余計に切なさが増す。
「……私もピアス開けようかな」
ぽつりと呟いてみる。
「んー?なんか言った?」
「なんでもないよ。バカ」
「ええ!なんで俺バカって言われたの?」
結局しんみりとするわけでもなく、緑斗とふざけていたらあっという間に昼休みが終わってしまった。