はじめて知った世界の色は


◇◆◇◇


「す……ちゃ、ん」

耳元で誰かに名前を呼ばれた気がした。遮光カーテンを付けてるはずなのに部屋が眩しくて明るくて。


「ねえ!翠ちゃん!!」

そんな声に私はハッと目を覚ました。見慣れた天井がいつもと違って、そこには私を覗き込むひとつの影。


「……っ!」

寝起きで頭が回らない中でとっさに枕を投げつける。でも枕はその人物を素通りして虚しく壁へと当たった。


「そんなの投げても俺には当たらないよ」

「………」

ああ、そうか。

そういえば〝いた〟んだっけ。


あのあとも緑斗はペラペラと喋り続けて、それを聞いている内に睡魔が襲ってきて……。そこからプツリと記憶がないから私は緑斗を無視して寝てしまったんだと思う。


「今何時?」

まだ頭がぼーっとしてる。

「7時だよ」

7時ってまだ眠りについて2時間しか経ってない。っていうかその前に……。


「なんでカーテン開いてんの」

部屋に光を入れたのはいつ以来だろう。日光が眩しすぎてテンションが下がる。
< 11 / 180 >

この作品をシェア

pagetop