はじめて知った世界の色は
まさか幽霊の話になるとは思わなかった。
しかもその幽霊と言われる緑斗が私の部屋にいて、前から一緒に生活してるなんてお母さんが知ったら、きっと腰を抜かしてしまうだろうな。
「……へ、へえ。そうなんだ」
私は平常心を保ちながらまたストレッチをしてるふりをした。
「夏も終わったっていうのに怖いわよねー」
「き、季節は関係ないんじゃないかな」
「どっちにしても良くないものだからお祓いしてもらったほうがいいって言ったんだけどね」
お母さんの悪気のない言葉に私はチラッと緑斗を確認して、そのあとはまた部屋でふたりきり。
「……なんかごめん」
「ん?なんで翠ちゃんが謝るの?」
だって緑斗を良くないものだって言った気がして。しかもお祓いとか言うから私の胸のほうが騒いだ。
「俺は気にしてないよ?それに一般的に幽霊はそういうイメージだし、お母さんが言ってたことも間違いじゃないしね」
「……そうだけどさ」
緑斗は普通なのに何故か私がモヤモヤしてしまっている。それを見た緑斗はフーッと息をはいて、窓際にある風車を回し始めた。
「でも幽霊は意味もなく留まったりしないから、きっとここにいなきゃいけない理由があるんじゃないのかな」
そう言いながら緑斗は切ない顔で笑う。
出逢った頃には感じなかった緑斗の変化。
その問いかけがすぐそこまで出てきているのに、私はゴクンとその言葉を飲み込んでしまう。
だから心の中で投げ掛けるしかない。
ねえ、緑斗。
もしかして、もしかして記憶が――。