はじめて知った世界の色は


そんなことを考えながら緑斗に向かってうちわを扇ぎ続けていると……。


「ねえ、翠ちゃんの初恋はいつ?」

何故か急にそんなことを聞いてきた。

熱が高いと無意識に突拍子もないことを言ってしまったりするからそんな感じなのかな。よく分からないけど。


「初恋とか、そんなのない」

「えー」

緑斗はすごく不満そう。


そもそも私って恋をしたことがあるのかって感じなんだけど、考えてみれば人を好きになったことはないかもしれない。

今の時代、彼女なんていらないっていう淡白な男子が多いらしいし私も彼氏とか考えたこともないから、まだ恋が未経験でも許されると思う。……たぶん。


「じゃあ、緑斗はあるの?」

どうせないでしょ、と同意を求める目で。


「俺の初恋は保育園の先生だったよ」

「……ベタだね」

「はは」

私もそんな初恋エピソードを持ってたらよかったけど、ないものはないんだから仕方がない。

これ以上話しを広げられても困るから私はあっさりと次の話題へ。


「そういえば先週から来てる教育実習の先生かなり美人らしいよ」

先生繋がりでふと思い出した。
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