はじめて知った世界の色は
「なんでって翠ちゃん学校でしょ?今日水曜日だよ」
緑斗が部屋にいること。そして緑斗が幽霊なこと。昨日から夢の延長みたいな気分なのに一瞬で現実に戻される言葉。
「私が学生だって証拠は?」
なんて、悪あがきでとぼけてみる。
「だってほら。制服にカバンに教科書に、ちょっとやりかけの勉強のノート」
緑斗はそう言ってハンガーにかけられた制服や机の上のノートを指さした。
こんな狭い部屋で隠すほうが大変だけど、一応そこは遠慮して見ないフリぐらいするものなんじゃないの?
「勝手に見るとかありえない」
「見える場所に置いてあって見るなって言うほうがありえない」
ああ言えばこう言う。
幽霊って普通は無口で暗闇に立ってたり、ちょっと鳥肌がたつような感じじゃなかったっけ?
こんな明るくてペラペラ喋る幽霊がいる?
はあ、と深いため息をつくと緑斗が可愛い顔をして首を傾げていて、黙っていればただの美少年なのに。
「……学校、行ってないの」
普通にさらりと。
聞こえなければいいなという声のボリュームで。