はじめて知った世界の色は
だけど時間を早送りできるはずもないから時計の進みは通常どおり。3限目の授業が終わって担任が教壇に立って咳払いをする。
「えっと、次の授業は教育実習の先生が見学にくるからな。あんまり意識しないで普段どおり真面目に取り組むように」
なんだか〝真面目〟って単語だけ大声になったような気もするけど、4限目はとくに厳しい古典の先生だし、騒がしくなることはないと思う。
由実は前から楽しみにしてたし、私もどれほどの美人なのか興味はある。
休み時間はあっという間に終わって、始業のチャイムが教室に鳴り響くと古典の先生と一緒に女の人が入ってきた。
……うわ。
クラスメイトたちがざわざわしちゃうぐらいの綺麗な人。
「皆さんはじめまして。教育実習でお世話になってる〝藤沢〟と言います。45分間みんなの授業の様子を見学したいと思うのでよろしくお願いします」
ニコリと笑う顔は美人よりも可愛い。
黒のリクルートスーツを着て、膝下のスカートから見えるスラッとした長い足。髪の毛は邪魔にならないようにひとつにまとめていて、隣に並べないくらいすごく小顔。
これは想像以上というか……美人だと噂になるはずだ。