はじめて知った世界の色は


藤沢先生は教室の後ろに移動して、古典の授業の様子を真面目な顔で聞いていた。

クラスメイトの男子たちなんて授業どころじゃないって感じでソワソワしてるし、私も珍しく何回も見てしまう。

整った顔に免疫はあるはずなのに、同じ性別だと思えないほどのオーラ。


たしかお姉ちゃんと同い年の22歳だっけ。

つまりまだ大学生のはずだし、生きた年数は5年しか変わらないはずなのにこの差はなんなんだろう。

私も大学生になればあのぐらい大人の雰囲気が漂ったりするんだろうか。……いや、ないな。


そんな悲しい現実を受け入れたところで、手に持っていたシャーペンが滑って床へと転がってしまった。

慌てて取ろうとした時、「はい、どうぞ」と藤沢先生が私より先に拾ってくれた。


「あ……ありがとうございます」

美人でおまけに行動力もあるなんて色々と反則すぎる。

しかもなんだかいい匂いがしたし、私が男だったら絶対に好きなっちゃいそう。相当高嶺の花だけど。

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