はじめて知った世界の色は
◇◆◇◇
「ねえ、翠!私今日も図書室なんだけど一緒に来ない?」
「……え?」
古典の授業が終わって昼休み。珍しく由実がテンション高めに誘ってきた。
今日は緑斗がいないし、時間をもて余しそうだったからありがたいけど……。
「お昼もそこで一緒に食べようよ。藤沢先生も来てくれるって」
「藤沢先生も?」
「藤沢先生も学生の時は図書委員だったらしいよ。色々と読みたい本もあるらしいし、それなら昼休みに来ませんかって言ってみたの」
由実は先生と話したがってたし、さっきの授業では挨拶だけでほとんど会話なんてできなかったからな。
ひとりぼっちのお昼ご飯ほど虚しいものはないし、私は由実に甘えて図書室に行くことになった。
図書室にはすでに藤沢先生がいて、難しいジャンルの本を手に取っていた。
「先生、お昼一緒に食べましょう!」
「あ、森川さんに茅野さん」
やっぱり笑う顔は小さなえくぼができて可愛い。
しかも自己紹介なんてしてないのに私の名字を知っていて、教育実習生なのにすでに教師としての意識が高いんだなって感心しちゃう。