はじめて知った世界の色は
藤沢先生はそのあとも色々なことを教えてくれて、毎日特急の電車に乗って家から2時間もかけて学校に来てること。
最近飼いはじめたマルチーズを溺愛してること。
そんなことを可愛い笑顔で包み隠さず話してくれた。
先生からは絶えずいい匂いがしていて、香水ではないけれどお風呂上がりにつけるボディローションのような爽やかな石鹸の香りがする。
……きっと彼氏がいるんだろうな。
こんなに美人で性格も完璧なら男が放っておかない。
教育実習とはいえ先生という立場だし恋愛の話は迷惑だからあえて聞いたりはしないけど。
「先生って兄弟とかいるんですか?」
いつの間にか話題は先生の家族になっていた。
「う、うん。いるよ。弟がひとり」
……あれ。今ちょっとだけ歯切れが悪かった気がする。
「えー絶対弟さんも美形ですよね!」
「どうかなあ。女の子にはモテてたと思うけど本人は自覚がないっていうか、けっこうのんびりした性格だったから」
「そうなんですね。写メとかないんですか?」
「はは、写メはないなあ。ごめんね」