はじめて知った世界の色は
そんな話をしているとカウンターの前で1年生が困った顔をしていた。どうやら読みたい本が見つからなかったらしい。
それを見かねた由実がご飯を中断して声をかけて、図書委員らしく女の子を本棚へと誘導する。
「森川さんって本当に本が好きなんだね」
「はい。いつも暇さえあれば読んでます」
先生とテーブルでふたりきりになってもあまり空気は変わることなく普通に会話がはじまった。
先生は髪の毛を右耳にかけながら、甘さ控えめのカフェオレをストローで飲む。その長いまつ毛と伏せた瞳を失礼だと思いながらも観察してしまう。
「茅野さんは兄弟っている?」
すると突然、そんなことを聞かれた。
「はい、姉がいます。22歳で先生と同い年です」
お姉ちゃんと同じ年齢の人を先生と呼んでいる違和感はまだ多少あるんだけど。
「そうなんだ。仲良し?」
「うーん。最近はそうですね。やっと仲良しになれたっていうか……」
そういえばお姉ちゃんのメールの返事止めちゃってる。今日の夜に返せばいいか、なんてぼんやりと考えながら、話を途切れさせないように先生に質問を返した。
「先生は仲良しですか?弟さんと」
するとまた先生の顔が少し変わった。