はじめて知った世界の色は


そして次の日からまるで日曜大工のような金ヅチを打つ音が学校のあちらこちらで響いていた。

正門には大きなアーチが作られるらしく、アーチ係の3年がもう下書きをはじめている。

まだ経費は詳しく決まってないけど、その中から出し物に使う道具や商品を買ってきて、当日に使った分以上の利益が出れば全てそのお金はクラスで使っていいことになっている。

ほとんどのクラスが打ち上げ代に回すらしいけど、うちのクラスは仲良しじゃないから打ち上げはやらなそう。

きっと誰かが労いのジュースやお菓子を買ってきて、それが配られるだけだと思う。


「翠見て。私ちょっと考えてきたんだけど」

そう言って由実がコピー用紙に書いたイラストを数枚見せてくれた。


「うわ、なにこれ!うまっ!」

ちょっと言葉使いが悪くなっちゃうぐらい本当に上手かった。


「昔は絵を書いてたら、からかわれるだけだったんだけど、こうして堂々と書けるってやっぱり嬉しいものだよね」

由実は多才だから羨ましい。

同時にこのイラストに私がどう色づけをするかが問題だ。手が震えて普通にはみ出そう。むしろ考えただけでちょっと胃が痛くなってきた。

私はみんなが準備をしてる間にひとりで小休憩をすることにした。
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