はじめて知った世界の色は
結局、文化祭の準備は午前中の2時間しか与えてもらえなくてその他は当然ながら退屈な授業が待っている。
明日と明後日は今日よりも時間が少ないらしいし、そろそろ焦らないと私もヤバい気がする。
「え?今日の放課後残るの?」
その日のホームルームが終わってクラスメイトが次々と帰っていく中、私は帰り支度をしないでいた。
「うん。少し残ってやってくよ」
「でも翠だけにやらせるのは心苦しいかも。私も少し手伝ってから帰るよ!」
「いいのいいの。由実は用事があるんでしょ?頼りないかもしれないけどちゃんと塗っておくからさ」
「……そお?」
心配する由実を帰らせて「よし」と邪魔な髪の毛をひとつに結ぶ。
まずは机を少しだけ前にずらして、床にペンキの色がつかないように新聞紙を敷いた。
他のクラスでは放課後に残ってやることは珍しくないけど、うちのクラスはもちろん私しか残ってない。
わずかに開いている窓からは白いカーテンがゆらゆらとしていて、中庭にいる3年の声が聞こえてくる。
「なんか誰もいない教室ってドキドキするよね」
何故か緑斗がキラキラとした顔をしていた。