はじめて知った世界の色は


「やっぱり人気の出し物だと売り切れたりするんだね」

由実はいちご味、私はメロン味を食べながら、
そのふわふわの氷を口の中で堪能する。


「けっこう暑いから冷たいものは売れるよね。冷えたフルーツを棒に刺して食べ歩きできるようにしたら売れそう」

「あーそれ観光地とかでよくあるよね!来年アイデアとして出してみてもいいかも!」

由実の言葉にもうひと口かき氷を食べながら「来年かあ……」と小さな声で呟いた。


由実と同じクラスになれる保証はないけど、来年の文化祭のことを考えてるなんてちょっと不思議。

いじめを乗り越えて学校に通いはじめた時はこの現実のほうが夢みたいだったのに、今は引きこもっていたあの頃のほうが夢だったように思える。

もうダメだとあれだけ卑屈になっていたのに、
きっかけさえあればこんなにも人間は変われるんだと染々思う。

そんな中でやっぱり一番私の支えになってくれたのは……。


……あれ?

キョロキョロと辺りを見渡して、気づけば緑斗がいなくなってた。
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