はじめて知った世界の色は


ねえ、緑斗は今どこにいるんだろう。

この目の前にいる水槽の魚たちみたいに自由で、自分らしく私の大好きな顔で笑っているだろうか。


私は緑斗がいたから前を向けた。

学校に行けた。家族とも話せた。友達もできた。

諦めていた時間を取り戻すことができた。


そして……人を大切に想う気持ちを教えてもらった。


緑斗から与えられたことを数えるとキリがない。

たくさん、たくさんありすぎて全部は語れない。



――『翠ちゃん俺がいるからね』

その言葉がどれほどの力を持っていたか緑斗は知らないでしょ?


――『俺は翠ちゃんじゃなきゃダメだったことがたくさんあるんだよね』

あのとき私がどれほど嬉しかったか知らないでしょ?


――『ありがとう、翠ちゃん』

私はまだ〝ありがとう〟も言えてない。

< 171 / 180 >

この作品をシェア

pagetop