はじめて知った世界の色は
ねえ、緑斗は今どこにいるんだろう。
この目の前にいる水槽の魚たちみたいに自由で、自分らしく私の大好きな顔で笑っているだろうか。
私は緑斗がいたから前を向けた。
学校に行けた。家族とも話せた。友達もできた。
諦めていた時間を取り戻すことができた。
そして……人を大切に想う気持ちを教えてもらった。
緑斗から与えられたことを数えるとキリがない。
たくさん、たくさんありすぎて全部は語れない。
――『翠ちゃん俺がいるからね』
その言葉がどれほどの力を持っていたか緑斗は知らないでしょ?
――『俺は翠ちゃんじゃなきゃダメだったことがたくさんあるんだよね』
あのとき私がどれほど嬉しかったか知らないでしょ?
――『ありがとう、翠ちゃん』
私はまだ〝ありがとう〟も言えてない。