はじめて知った世界の色は
「な、なんで?どうして……?」
分からなすぎて言葉がそれしか出てこない。
だって緑斗がここにいるはずない。
緑斗は事故に遭ってそれで……。
私の魚のようにパクパクする口を見て、緑斗が優しい顔で微笑んだ。
「あのあと俺は翠ちゃんに言われたとおり姉さんに気持ちをぶつけに行った。もちろん俺の一方的な叫びだったけど言えたことで気持ちが軽くなってスッとした」
「………」
「それで次に目が覚めたら病院のベッドの上だった」
「病……院?」
私の問いかけに緑斗がこくりと頷く。
「頭を強く打ってずっと眠ってたらしい」
その言葉に私はだんだんと夢から覚めて、目の前にいる緑斗を直視できるようになってきた。
「つまり……緑斗は生きてたってこと?」
「うん」
じわじわと実感してきた喜びに今なら空も飛べると思った。館内の電気は次々と消されて今は足元の非常灯と熱帯魚が泳ぐブルーの水槽の明かりだけ。
それでも鮮明にお互いの顔を見ることができて、私の心臓が違う意味のドキドキに変わっていく。