はじめて知った世界の色は
「事故のリハビリとか学校の手続きとか色々あって会いにくるのがこんなに遅くなっちゃた」
「なんで私がここにいるって分かったの?」
「ああ、これ」
そう言って緑斗が取り出したのはさっき話していた水族館のチラシ。
「商店街でこのチラシを見つけてさ。そこに何故か翠ちゃんが写ってるしゴマフアザラシの赤ちゃんは可愛いし。もうそこからここまで全力疾走」
あはは、と無邪気に笑う顔を見て私はホッとした。
笑っていればいいな、緑斗らしく過ごしていればいいなって、ずっと願っていたことだったから。
緑斗にしか出せない和やかな空気が流れたあと、ちょっと沈黙になって、そして……。
「本当は俺が目覚めるのは奇跡だったんだって」
緑斗の声が真面目になった。
「その奇跡がなんで起きたのか科学的には説明できないらしいんだけど、俺ははっきりと分かる」
「………」
「俺は翠ちゃんと別れた河川敷でさよならって言えなかった。言いたくなかったんだ」