はじめて知った世界の色は
また憂鬱で、息苦しくて、小さな世界で閉じ籠ることしかできない1日がはじまる。
スマホを確認すると時間は6時45分。パタンとリビングの扉が開く音がして、お母さんが換気扇のスイッチを入れる。
そしてお父さんが新聞を片手にいつもの定位置に座りながら固めの目玉焼きとマンデリンのコーヒーが出てくるのを待つ。
それが我が家の日常であり、目で見なくても分かる17年間の光景。
そこに私はいない。
ふたりとも私のことなんて気にしてない。
ううん、違う。そんな風にさせたのは私。
いつの間にかお母さんもお父さんも私を起こしに来なくなった。言わなくても、聞かなくても私がここから出てこないことぐらい分かってるんだ。
異様だった私の行動がいつの間にか日常になって、それが当たり前になって、この狭い自分の部屋だけが私の居場所になっていた。
朝も昼も夜も私にとっては同じこと。
閉ざされたカーテンに、必要な時以外は開けない部屋のドア。
誰とも話さないし、誰とも関わらない。
それなのにやっぱり朝は嫌い。
ここから出るつもりはないのに、ここにいてはいけないと体が認識しているみたいに居心地が悪い。