はじめて知った世界の色は
「ほら、夜のさんぽは正解だったでしょ」
まるで自分の手柄のような口調で緑斗は空を指さす。
上にはキラキラと輝く無数の星。田舎ってわけじゃないのに住宅街からの明かりが消えているおかげがこの街でこんなに星が綺麗に見えるなんて初めて知った。
「夜はいいよね。みんな〝同じ〟って感じで」
緑斗はそう言って「んー」と隣で両手を上に上げて身体を伸ばしていた。
「同じ?」
「だってみんな動かないで身体を休める時間でしょ。俺は幽霊だしもうなにもできないけど、やっぱりもどかしい気持ちはあってさ」
「………」
「だからこうして動かずにみんな平等に流れている時間帯に安心するっていうか……上手く言えないけど」
緑斗はまたあはは、と無邪気に笑って、「さそり座はどこかなあ」なんて言いながら空を見上げた。
緑斗が言いたいこと、分かる気がする。
私も太陽が昇ってる間はいつももどかしい。
家の前を通る学生たちの声を聞くとドキッとするし、みんなが動いてる時間に私はなにをしてるんだろうって孤独になる。
そんな気持ちを緑斗も同じように持っていたんだと知って、私も上手く言えないけど胸がギュッとなった。