はじめて知った世界の色は


「翠ちゃん好きな人とかいないの?」

頭の回転は早いくせにちょっと女心には疎くてデリカシーがない。


「いたら学校に行って今頃青春を楽しんでるでしょ」

「あー、たしかにそうかも」

そしてまたサラリとした返事。まあ、ネチネチ聞かれるよりはいいけどあっさりしすぎてるのもそれはそれでモヤモヤしたりする。


「……アンタは好きな人とかいたの?」

「だから記憶がないんだってば!」

「ああ、そうか。ごめん」

コンクリートを歩く足音がやけに響いて、隣に緑斗がいるのにその音はひとつだけ。


……好きな人か。

そういえばそんなこと考えたこともなかった。


今は恋愛する心の余裕なんてないし、そもそも異性との関わりなんてあまりないから男友達もいない。

チラッと隣を歩く緑斗を見ると、その綺麗すぎる横顔と星を見上げるしっかりとした首筋。

そしてゴツゴツとした身体の造りを確認して〝ああ、そういえば緑斗は男だった〟と気づかされる。


緑斗がどんな人だったか分からないけど、恋愛に関しては私よりも遠い場所にいそう。

だって見た目は健全な男子だけど中身は小学生みたいな感じだから。

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