はじめて知った世界の色は
こうして話してると緑斗が幽霊だって忘れそうになるけど、外灯に照らされた足元を見るとそこにあるはずのものがない。
「やっぱり影はないんだね」
とても眩しいぐらいの月なのに緑斗はその光に照らされることはない。
「うん。だから今は翠ちゃんが夜中にひとりでさんぽしてる感じ」
「だいぶ怪しい人じゃん」
「翠ちゃん可愛いからヘンな人に襲われるかも。でも俺は助けてあげられないし、そうなったら困るなあ……」
……可愛い?私が?
暗闇で緑斗の目がおかしくなってるのかな。だって私は……。
『――ブス。早く消えろよ』
そんなことを散々言われたよ。別に自分のことを可愛いなんて思ってたわけじゃないけど言葉はナイフに似ていて、言われるたびにグサグサと胸の奥に刺さった。
消えない痛み。
それを私に与えた人たちはなに食わぬ顔で日常生活を送っていて、私が学校を休んでることさえ笑っているんだと思う。
……ああ、また心が現実から離れていく。
スーッと闇の中に向かって落ちていく感覚だ。
私なんか……私なんて……。